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百合ですね。苦手な人は回避してください。
あと何だか暗い話になってしまいました。そう言うのが苦手な人もまわれ右。
2話とは言ってますが続きものってわけでもないので、ひとつくらい抜かしてもたぶん問題ないです。
では大丈夫な人は↓へどうぞ♪
百合ですね。苦手な人は回避してください。
あと何だか暗い話になってしまいました。そう言うのが苦手な人もまわれ右。
2話とは言ってますが続きものってわけでもないので、ひとつくらい抜かしてもたぶん問題ないです。
では大丈夫な人は↓へどうぞ♪
私――何の変哲もない女の子、詩乃は、読みかけの物語を閉じて定刻通りベッドに入ることにした。
閉じた本の表紙が視界の端に映る。・・・国境を超えた大恋愛を描いた長編小説だ。私は登場人物たちのそれぞれの思惑や思想、感情、そして愛情が複雑に絡んだこの物語が大好きだった。ある国の王女様が、どうにも私の姿とダブって見えて感情移入がしやすいというのが主な理由であったかもしれないが。
天蓋付きの大きなベッド。私は靴を脱いで裸足になり、ベッドにもぐりこむ。カーテンを閉めれば、小さな密室気分の出来上がりだ。目をつむれば、すぐにでも夢の世界に行くことができる。
私の夢は少々おかしい。いつも同じ場所に自分がいて、いつも同じ人と連れ立って遊んだり、仕事に従事してみたりするのだ。夢の中ですることはさまざまだけれど、私の夢に出てくる人物はいつもほとんど変わらない。・・・いや、正確には毎回変わっているのだが。
その毎回変わっている部分というのは、みんなの成長度合いだ。現実の私と同じように、夢の私も成長するし、周りの人物も成長する。つまるところ、夢と現の二つの世界は時間軸を共有しているのだ。
私は目をつむることにする。
「今日は、どんな夢かな」
などとつぶやきながら。
「詩乃っ」
「ぅわっ」
私がベンチに出現するなり、琴夢が半ば飛行するかの如く飛びついてきた。
まあ、よくあることだから私はあんまり気にしていない。それよりも、
「今日は何する?」
そのことの方が大事である。
「そうねぇ・・・」
琴夢が思案し始める。
中世ヨーロッパ風のこの街並みには、意外と近代的な設備もそろっているし、ちょっと大通りから外れて小道に入れば洒落た小物屋や、隠れ家的喫茶店もある。表の大通りには商店街はもちろん、いわゆる雑居ビルのような店がいくつも入ったビルもある。どこが中世なんだとつっこまれそうだから一応説明すると、中世を感じさせるのは町並みであり、人々の格好や顔つきであり、そして何よりも私たちの貴族のような服である。
「・・・よし」
琴夢が頭の回転を止め、手をポンと打つ。何かいいアイディアが浮かんだらしい。私は期待しながら琴夢の顔を見る。
「カフェ行こう。たまにはゆっくりお茶っていうのもいいじゃない?」
・・・カフェ、遠いんだけど。
結局私は何も思いつかなかったし、今週は琴夢が行動決定権を握っているので、私は渋々大通りの長い道のりを歩いた。琴夢は上機嫌にステップを踏みながらスカートをひらひらさせていた。いつもの大通りから外れ、Starlight Coffeeという、裏通りのカフェに入る。
レンガ造りの店には、外観とは裏腹に自動ドアが整備され、店内は白熱灯が煌々と輝く現代風の店だ。私たちは空いているテーブル席にさっと身を滑らせ、やわらかい椅子に深々と腰掛けた。
カフェというのは、軽い食事をしに来る人、集中して作業を行いたい人、読書をしたい人、そして私のように時間をつぶしに来る人、さまざまな人々が集まる場所だ。もちろん、別段目的意識があってきているわけではない人も多いだろうが。
そして今日もカフェは、その人々を包み込んでくれている。私の隣の席に座っている、大きな帽子を目深にかぶっている青年と思しき人物は、ブラックコーヒーをすすりながら文庫本を片手に、キセルをくゆらせている。
「ねぇ、何にする?」
琴夢がメニューを私に押しつけてきた。見れば、私が回りを観察しながら考え事をしている間に注文を済ませてしまっていたらしい。素早い人だ。
少し考えて、私は琴夢と同じ紅茶を注文することにした。どこかの高級な茶葉をたっぷり使い、ミルクティーやレモンティーにしても美味しくいただけるという売り文句が、メニューに大きく書かれていた。
「じゃ、これ」
私が琴夢にそう言うと、琴夢はなぜか首を横に振った。わかってないなぁ、といった風だ。
「違うの、頼んで」
「えー」
仕方なしに私はカプチーノを注文する。琴夢の思惑はよくわからないが、従っておいた方がいい気がした。
「これでいいでしょ?」
そう聞けば、
「うん」
こうにっこり返されるから不気味だ。
ちょうど昼食時だから、という理由で、私たちはピザを一枚頼んだ。トマトと水牛のチーズがベースの、ヘルシーながらごく普通のピザだ。私たちは少し前に購入したばかりのドレスを汚さないよう気をつけながら、それを頬張った。
「はふ、はふっ、あふいっ」
なんて口から蒸気を吐いている琴夢を他所に、私は火傷しないよう、小さく切り分けたピザを端から少しずつ侵略していく。琴夢は恨めしそうに、ピザにかじりついたまま上目遣いで私を睨んでいた。
お互いピザも最後の一口、というときに、琴夢が手に持ったそれを私の口に押し込んできた。
「むぐっ!?」
「ほら、詩乃も私に、っむぐぅ!」
言われなくても仕返しするに決まっている。
「・・・ごくん。ふふ、やったわねぇ?」
「何よ、先にやったのは琴夢じゃないの」
私たちは、空になったピザの皿をはさんで、視線をぶつけて火花を散らせている・・・というのは違っている。これはただの、お互い無言で了承済みの戯れなのだ。
「あぁ、そうだったわ」
くつくつと琴夢が笑い、視線が外れたところでこれは終わり。何の意味があるのかと訊かれたら確かに意味はないが、私たちの間での遊びの一つなのだ。
隣から、青年の目深にかぶった帽子の下から、訝しむような表情が覗いていた。
会計を済ませ外に出ると、日が傾きかけていた。真鍮の懐中時計を開き、時間を確認する。4時前だった。
「もう、時間かぁ・・・」
横で勝手に懐中時計を覗いていた琴夢が、大きなため息をつく。それは決して大げさなのではなく、琴夢の心中の気の重さがそのまま表れているだけだ。
「そうだね」
特に何を思うでもなく、私はそう返す。ただ、いつもの眠りと目覚めの繰り返しが行われるだけなのだから。
だが、琴夢が決してそんな軽い思いでいるとは私も思っていない。
「・・・」
琴夢が、後ろから私に抱きついてきた。ぎゅっと、首に腕が回され強く抱擁される。
「明日も、ちゃんと来てよ・・・詩乃・・・?」
私は、私の首の前で固く組まれた手をさすってやり、ゆっくりと身体を回して琴夢と対面する姿勢を取る。はたから見れば完全なる恋人同士の熱いひと時、といったところだったろう。だが、私は気にしない。この世界は私にとっての夢。そして琴夢も気にはしない。琴夢にとって、現実とは私の存在に他ならないのだから。
私がベンチに座ると、琴夢が覆いかぶさるようにして求めてくる。
「んっ・・・」
唇が、柔らかい感触を捉える。琴夢の唇だ。
「ふっ・・・」
口同士が触れる程度の、バードキス。
しばし見つめ合う。琴夢の目から流れた一滴の涙を、私は舌で受け止めてやった。
私が起きている間すなわち現実側で生活している間、琴夢やこの世界はどうなっているのだろう。この世界を、琴夢を創造したのは私の頭のどこかであるはずなのに、わからなかった。それとも、忘れてしまったのだろうか。
なんて考えていると、もう日が沈みかけていた。
「ねぇ、詩乃?」
まぶたが赤い琴夢が、無理に笑った顔で問いかけてくる。
「ん?」
「詩乃は、・・・私と別れる時、つらく・・・ないの?」
琴夢は精一杯笑っていた。ひきつらせながらも、懸命に。
もう何度もやった問答だった。小さい頃から、何度も何度も。
「・・・つらいよ。でも私にだってしなくちゃいけないことがある。いつまでも寝ているわけにはいかないの」
琴夢は、それでも笑っていた。
天蓋付きベッドの上、私はさっぱりしない目覚めを迎えた。
何も考えず、無駄な動作一つせず、私は机の上に置いてある夢日記に今日の夢での出来事を綴る。日記のところまで来るまでは冷めきっていた頭が、ここにきて理性を感情が打ち破っていた。
ペンでノートを殴るようにして字を綴っていく。
――私だって、琴夢ともっと遊びたい。
でも、私にとっての琴夢は虚構。現実にだって、私は生きていなければいけない。
――私だって、琴夢のことが誰よりも大好きだ。
でも、私にとっての琴夢は虚構。虚構に恋するなんて間違っている。何より、私も琴夢も女。
――私の世界に、理不尽や不可解が多すぎる。
でも、それが真理。もとい、心理。
私は、感情を理性で押し殺すことに快感を覚え、そしてそうすることによってしか自分の存在意義を知ることができない人間だった。
時計を見る。
午前7時15分を、時計は無機質に示していた。
閉じた本の表紙が視界の端に映る。・・・国境を超えた大恋愛を描いた長編小説だ。私は登場人物たちのそれぞれの思惑や思想、感情、そして愛情が複雑に絡んだこの物語が大好きだった。ある国の王女様が、どうにも私の姿とダブって見えて感情移入がしやすいというのが主な理由であったかもしれないが。
天蓋付きの大きなベッド。私は靴を脱いで裸足になり、ベッドにもぐりこむ。カーテンを閉めれば、小さな密室気分の出来上がりだ。目をつむれば、すぐにでも夢の世界に行くことができる。
私の夢は少々おかしい。いつも同じ場所に自分がいて、いつも同じ人と連れ立って遊んだり、仕事に従事してみたりするのだ。夢の中ですることはさまざまだけれど、私の夢に出てくる人物はいつもほとんど変わらない。・・・いや、正確には毎回変わっているのだが。
その毎回変わっている部分というのは、みんなの成長度合いだ。現実の私と同じように、夢の私も成長するし、周りの人物も成長する。つまるところ、夢と現の二つの世界は時間軸を共有しているのだ。
私は目をつむることにする。
「今日は、どんな夢かな」
などとつぶやきながら。
「詩乃っ」
「ぅわっ」
私がベンチに出現するなり、琴夢が半ば飛行するかの如く飛びついてきた。
まあ、よくあることだから私はあんまり気にしていない。それよりも、
「今日は何する?」
そのことの方が大事である。
「そうねぇ・・・」
琴夢が思案し始める。
中世ヨーロッパ風のこの街並みには、意外と近代的な設備もそろっているし、ちょっと大通りから外れて小道に入れば洒落た小物屋や、隠れ家的喫茶店もある。表の大通りには商店街はもちろん、いわゆる雑居ビルのような店がいくつも入ったビルもある。どこが中世なんだとつっこまれそうだから一応説明すると、中世を感じさせるのは町並みであり、人々の格好や顔つきであり、そして何よりも私たちの貴族のような服である。
「・・・よし」
琴夢が頭の回転を止め、手をポンと打つ。何かいいアイディアが浮かんだらしい。私は期待しながら琴夢の顔を見る。
「カフェ行こう。たまにはゆっくりお茶っていうのもいいじゃない?」
・・・カフェ、遠いんだけど。
結局私は何も思いつかなかったし、今週は琴夢が行動決定権を握っているので、私は渋々大通りの長い道のりを歩いた。琴夢は上機嫌にステップを踏みながらスカートをひらひらさせていた。いつもの大通りから外れ、Starlight Coffeeという、裏通りのカフェに入る。
レンガ造りの店には、外観とは裏腹に自動ドアが整備され、店内は白熱灯が煌々と輝く現代風の店だ。私たちは空いているテーブル席にさっと身を滑らせ、やわらかい椅子に深々と腰掛けた。
カフェというのは、軽い食事をしに来る人、集中して作業を行いたい人、読書をしたい人、そして私のように時間をつぶしに来る人、さまざまな人々が集まる場所だ。もちろん、別段目的意識があってきているわけではない人も多いだろうが。
そして今日もカフェは、その人々を包み込んでくれている。私の隣の席に座っている、大きな帽子を目深にかぶっている青年と思しき人物は、ブラックコーヒーをすすりながら文庫本を片手に、キセルをくゆらせている。
「ねぇ、何にする?」
琴夢がメニューを私に押しつけてきた。見れば、私が回りを観察しながら考え事をしている間に注文を済ませてしまっていたらしい。素早い人だ。
少し考えて、私は琴夢と同じ紅茶を注文することにした。どこかの高級な茶葉をたっぷり使い、ミルクティーやレモンティーにしても美味しくいただけるという売り文句が、メニューに大きく書かれていた。
「じゃ、これ」
私が琴夢にそう言うと、琴夢はなぜか首を横に振った。わかってないなぁ、といった風だ。
「違うの、頼んで」
「えー」
仕方なしに私はカプチーノを注文する。琴夢の思惑はよくわからないが、従っておいた方がいい気がした。
「これでいいでしょ?」
そう聞けば、
「うん」
こうにっこり返されるから不気味だ。
ちょうど昼食時だから、という理由で、私たちはピザを一枚頼んだ。トマトと水牛のチーズがベースの、ヘルシーながらごく普通のピザだ。私たちは少し前に購入したばかりのドレスを汚さないよう気をつけながら、それを頬張った。
「はふ、はふっ、あふいっ」
なんて口から蒸気を吐いている琴夢を他所に、私は火傷しないよう、小さく切り分けたピザを端から少しずつ侵略していく。琴夢は恨めしそうに、ピザにかじりついたまま上目遣いで私を睨んでいた。
お互いピザも最後の一口、というときに、琴夢が手に持ったそれを私の口に押し込んできた。
「むぐっ!?」
「ほら、詩乃も私に、っむぐぅ!」
言われなくても仕返しするに決まっている。
「・・・ごくん。ふふ、やったわねぇ?」
「何よ、先にやったのは琴夢じゃないの」
私たちは、空になったピザの皿をはさんで、視線をぶつけて火花を散らせている・・・というのは違っている。これはただの、お互い無言で了承済みの戯れなのだ。
「あぁ、そうだったわ」
くつくつと琴夢が笑い、視線が外れたところでこれは終わり。何の意味があるのかと訊かれたら確かに意味はないが、私たちの間での遊びの一つなのだ。
隣から、青年の目深にかぶった帽子の下から、訝しむような表情が覗いていた。
会計を済ませ外に出ると、日が傾きかけていた。真鍮の懐中時計を開き、時間を確認する。4時前だった。
「もう、時間かぁ・・・」
横で勝手に懐中時計を覗いていた琴夢が、大きなため息をつく。それは決して大げさなのではなく、琴夢の心中の気の重さがそのまま表れているだけだ。
「そうだね」
特に何を思うでもなく、私はそう返す。ただ、いつもの眠りと目覚めの繰り返しが行われるだけなのだから。
だが、琴夢が決してそんな軽い思いでいるとは私も思っていない。
「・・・」
琴夢が、後ろから私に抱きついてきた。ぎゅっと、首に腕が回され強く抱擁される。
「明日も、ちゃんと来てよ・・・詩乃・・・?」
私は、私の首の前で固く組まれた手をさすってやり、ゆっくりと身体を回して琴夢と対面する姿勢を取る。はたから見れば完全なる恋人同士の熱いひと時、といったところだったろう。だが、私は気にしない。この世界は私にとっての夢。そして琴夢も気にはしない。琴夢にとって、現実とは私の存在に他ならないのだから。
私がベンチに座ると、琴夢が覆いかぶさるようにして求めてくる。
「んっ・・・」
唇が、柔らかい感触を捉える。琴夢の唇だ。
「ふっ・・・」
口同士が触れる程度の、バードキス。
しばし見つめ合う。琴夢の目から流れた一滴の涙を、私は舌で受け止めてやった。
私が起きている間すなわち現実側で生活している間、琴夢やこの世界はどうなっているのだろう。この世界を、琴夢を創造したのは私の頭のどこかであるはずなのに、わからなかった。それとも、忘れてしまったのだろうか。
なんて考えていると、もう日が沈みかけていた。
「ねぇ、詩乃?」
まぶたが赤い琴夢が、無理に笑った顔で問いかけてくる。
「ん?」
「詩乃は、・・・私と別れる時、つらく・・・ないの?」
琴夢は精一杯笑っていた。ひきつらせながらも、懸命に。
もう何度もやった問答だった。小さい頃から、何度も何度も。
「・・・つらいよ。でも私にだってしなくちゃいけないことがある。いつまでも寝ているわけにはいかないの」
琴夢は、それでも笑っていた。
天蓋付きベッドの上、私はさっぱりしない目覚めを迎えた。
何も考えず、無駄な動作一つせず、私は机の上に置いてある夢日記に今日の夢での出来事を綴る。日記のところまで来るまでは冷めきっていた頭が、ここにきて理性を感情が打ち破っていた。
ペンでノートを殴るようにして字を綴っていく。
――私だって、琴夢ともっと遊びたい。
でも、私にとっての琴夢は虚構。現実にだって、私は生きていなければいけない。
――私だって、琴夢のことが誰よりも大好きだ。
でも、私にとっての琴夢は虚構。虚構に恋するなんて間違っている。何より、私も琴夢も女。
――私の世界に、理不尽や不可解が多すぎる。
でも、それが真理。もとい、心理。
私は、感情を理性で押し殺すことに快感を覚え、そしてそうすることによってしか自分の存在意義を知ることができない人間だった。
時計を見る。
午前7時15分を、時計は無機質に示していた。
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プロフィール
HN:
詩乃
年齢:
31
性別:
非公開
誕生日:
1993/03/14
職業:
専門学校生
趣味:
SS執筆、ゲーム、Twitter
自己紹介:
【詩乃】
趣味でSSを書いてます。
恋愛の形としては、そこに愛さえあればどんな組み合わせでもいいと思う。
・・・という理念の下、創作活動を行っております。
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恋愛の形としては、そこに愛さえあればどんな組み合わせでもいいと思う。
・・・という理念の下、創作活動を行っております。
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